河合貴子のレッズ魂ここにあり!「面目躍如~原口元気選手」
J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
原口元気の原動力は、感情の開放。残り試合、ゴールゲッターとして目覚めよ!
ミシャ監督は、常日頃から選手達に「フットボールを楽しみなさい」と言い続けている。
それを自ら実践して、緊張感が漂うダービーの大宮戦では、胸ポケットに一輪の赤いバラを挿し、試合前のミーティングで「私は、赤いバラを挿して、このダービーを楽しみたい。みんなも楽しんでやりなさい」と話したそうだ。
「絶対に勝たなければならない」「絶対にゴールを決めないといけない」と思うと余計な所に力が入り過ぎて、ミスキックになってしまったり、視野が狭くなり、シュートコースが無いのに無理やりゴールを狙うなど判断ミスが起きることが多々ある。プレッシャーに押しつぶされて、自滅することだってある。何事も楽しんでやることは、とても大切なファクターの1つだと思う。
だが、原口元気選手は違っていた。負ければ優勝戦線脱落の可能性があったプレッシャーが掛かる鹿島戦の前日、原口選手は「ダービーでゴールは決めたが、まだ男になりきれていない!鹿島戦で決めたら男になれる!」と自分にプレッシャーを掛けるかのように力強く話した。余りにも肩に力が入り過ぎているように思えたので、思わず原口選手に「鹿島戦を楽しんでよ」と声をかけた。すると、原口選手は戸惑いながら「ミシャさんも楽しめって・・・。楽しむことは、凄く大事なことだと思う。でも、俺は違うんだよね・・・。肩に力が入った方が、良い。気を張っている時の方が、良いプレーが出来るんだ。集中してるんだよ」と話し、「鹿島戦!絶対ゴールを決めて、男になる!」と断言したのだ。
その公約通り鹿島戦で原口選手は、後半26分、鈴木啓太選手からパスを受けると、左から斜めに中へドリブルで切れ込んで行き、渾身の力で右足を振り上げゴールを決め、拳で浦和のエンブレムを叩き、拳を天高く突き上げた。勝利へと導くゴールであった。
試合後、原口選手は「これに勝たないと優勝出来ないと思っていた。引き分けでは無く、必ず勝ち点3を取ることだけ考えた」と話した。
フットボールにおける原口選手の心の中は、沸々と煮えたぎるような激しい感情がある。9月28日引き分けで終わった湘南戦で、オフサイドの判定で認められなかった自分のゴールシーンを振り返り原口選手は「VTR見たけど、絶対オフサイドじゃない!練習でやっていた通りのイメージで良い形でゴールが決まったのに・・・。付いてない。俺、もってないのかなぁ・・・」と試合の翌日、悔しがっていた。「判定は覆らないから置いといて・・・。それにしてもあの幻のゴールは、凄く良い形で生まれたゴールだったね。シュートを撃ててゴールまで持って行けたことを評価しようよ。自信にならない?」と私が言うと、原口選手は「あっ~次の大宮戦!絶対ゴールを決めて男になる!決めなきゃダメだろ!」と獲物を狙うハンターのようにギラギラしていた。
肝臓挫傷後の復帰戦となったC大阪戦の前日も「もうサッカーやりたくてウズウズしている。C大阪戦、見ていて!俺、爆発するから!絶対ゴールを決めてやる!」と断言し、その言葉通りにC大阪のCKをキャッチした加藤順大選手からボールを受けた原口選手は、自陣から相手DF陣を寄せ付けず一気にドリブルで駆け上がり、爆発ゴールを決めたのだ。
この沸々と煮えたぎるような感情が、時には間違った方向へ行ってしまい原口選手は自責の念にかられたこともあった。メンタルコントロールの難しさに直面した原口選手は、今年の夏頃、悩んでいた時期もあった。原口選手は「良くも悪くも、感情を抑え過ぎている。今の自分は、ちょっとおとなしいと思う。感情を抑えると、自分の力が機能出来ない。先ず、チームのことを最優先に考えながら、サッカーに集中する『ワァー』と言う感情。激しい感情があって、自分らしいプレーが出来る。気持ちを抜いて、冷静にプレーすることも大事だが、自分の特徴が出無い」と話し、悩んだ末に出した結論は「感情の開放」であった。リーグ戦前半のC大阪戦で見せた爆発ゴールとリーグ戦後半の大宮戦、鹿島戦で見せた男になったゴールは、どちらも「感情の開放」である。だが、男になったゴールの方が、原口選手のメンタル的成長を覗い知ることが出来る。原口選手にとってある意味「感情の開放」こそがフットボールを楽しむことに繋がり、ゴールを狙う研ぎ澄まされた感性は冷静そのものなのかも知れない。
沸々と煮えたぎる激しい感情を開放し、強い気持ちでゴールを決めて男をあげる原口選手は、面目躍如だ。ゴールハンターとなり、更に男に磨きをかけてピッチで輝く。
Q. アキレス腱痛について教えて下さい。
A. スポーツ障害におけるアキレス腱痛は、痛い場所によって病態が違います。まず、踵の骨に近い所が痛い場合は、アキレス腱が踵の骨に付く所にクッションの役割を果たす袋(滑液包)があって、その部位での炎症によるアキレス腱滑液包炎が発生します。アキレス腱の真ん中が痛い場合は、繰り返しの負荷により、アキレス腱そのものが炎症や微小断裂を起こすアキレス腱炎が発生します。また、アキレス腱の周りを覆う膜が炎症を起し赤く腫れてしまうのが、アキレス腱周囲炎です。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科クリニック
整形外科・スポーツ整形・リュウマチ科・リハビリテーション
http://www.kawakubo-clinic.jp/