河合貴子のレッズ魂ここにあり!「10番の誇りを胸に刻んで~マルシオ・リシャルデス選手」
J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
シーズン終盤に力になれなかった。背番号10の苦悩。
フットボールにおいて背番号10番は、昔からゲームをコントロールする大きな役割を担って来た。現代のフットボールでは、さほど背番号は意味をもたなくなってきているが、それでも背番号10番には期待が掛かり、重みがある特別な背番号である。
浦和の10番と言えば、マルシオ・リシャルデス選手である。マルシオ・リシャルデス選手は少し照れながら「フットボールにおいて背番号10は、重要とされている、頼りになる背番号だ。プロとして、10番の実力を見せないといけない」と話した。ブラジル人にとっては、フットボールの神様と言われるペレ選手がブラジル代表で付けていた背番号であり、神聖な背番号であることを、マルシオ・リシャルデス選手はもちろん意識していたのだ。
今シーズンのマルシオ・リシャルデス選手は、リーグ戦26試合出場し、先発は僅かに4試合だった。先発でやれる自信はマルシオ・リシャルデス選手の中にあった。だが、途中出場でゲームの流れを変えたり、ゲームを落ち着かせる役割の起用が多かった。それでも、マルシオ・リシャルデス選手は、愚痴一つ零さずに常にチームの為に自分がやらなければならないことに勇往邁進していた。
そのマルシオ・リシャルデス選手は、8月31日埼スタで行なわれた新潟戦後から笑顔が消えた。心配になり「どうしたの?」と尋ねると足の付け根を指さして「股関節が痛い」と暗い表情で話した。それでも9月11日駒場スタジアムで行われた天皇杯2回戦となった栃木戦に先発出場し、前半42分、自ら得たPKを冷静に決め前半を終えて矢島慎也選手と交代となった。試合後、マルシオ・リシャルデス選手は「ゲーム中も痛みを感じながらも、しっかりと今週1週間治療したおかげで、前半だけでも出られた。試合に出られたことに意味があった」と嬉しそうにその時は話していた。しかし、後から思えば痛みを感じながらもプレーをして、無理をしたことが原因で戦線離脱を余儀なくされてしまったように思えてならない。
栃木戦後、マルシオ・リシャルデス選手は、暗く沈んだ表情で「グロインペインかもしれない・・・」と足の状態を教えてくれた。「グロインペイン」と言えばフットボール選手の職業病とも言われ、股関節に痛みを感じて股関節の稼働域が悪くなり、走る、蹴るなどの動作が困難になる。その後、マルシオ・リシャルデス選手は別メニューでリハビリをして、復帰はするものの痛みを感じる股関節を庇い、膝をはじめとする色んな所が炎症を起こしてしまい離脱を繰り返した。リーグ終盤になり優勝争いの中、チームは中々結果がついて来ない。苦しいチーム状況を見ながら、マルシオ・リシャルデス選手は焦っていた。「何で自分は、チームの所に復帰出来ないのか・・・」自分を責めた。「10番でありながらチームのための戦力になれない。責任を感じる。中途半端ではみんなの力になれない。最高のコンディションを今の自分と比べながら考えた上で、ピッチに戻りたい。努力するのみです!」と話したが、11月2日ナビスコ杯決勝となった柏戦を最後に、今シーズンはピッチに立つことは無かった。無理が祟り、リーグ残り4試合を棒に振ってしまうことになったのだ。
「このタイミングで怪我してしまって・・・」と苦悩するマルシオ・リシャルデス選手だったが、それでも「ピッチの中で走れなかったとしても、みんなを勇気づけたい。10番であるからには、自分がチームにとって出来ることをする。あのね・・・。10番って、自分の子供が風邪をひいている時の親の思いと同じ気持ちなんだ。チームをどうにかしないと・・・。救うためにはどうすれば良いだろう?!10番が出来る役割をしたい」と話し「落ち着いて、眠ることも出来ない」と下を向いた。自分がピッチに立てない歯がゆい思いが、背番号10番の誇りと交錯していた。
リーグ終盤にチームが失速して行く中、怪我でピッチに立てない自分を責め、何とか復帰をしようと焦り、それでも復帰が困難と分かると気持を切り替えて、チームを精神的に支えようとしたマルシオ・リシャルデス選手だった。「厳しい時に、みんなが一丸となって闘えるのが、本当の強いチームだ。浦和は強いチームになって行く」身体も心もボロボロで満身創痍なのにマルシオ・リシャルデス選手は話した。苦悩する日々を過ごしながらもチームのことを常に考えることが出来るのが、マルシオ・リシャルデス選手なのだ。このオフシーズンにしっかりと身体を治し、最高のコンディションでピッチに戻って来て欲しい。マルシオ・リシャルデス選手のFKが見たい。ゴールを結ぶパス、ゴールが見たい。何よりも、あなたの笑顔が見たい。マルシオ・リシャルデス選手の笑顔は、みんなを笑顔に出来る力がある。それが浦和の背番号10番である。
Q.膝にあるお皿と呼ばれる骨はどのような役割があるのでしょうか?
A.膝には、大腿骨と言う膝の上の骨と頸骨と腓骨と言う膝の下の骨があります。この上下の骨の間に膝の関節があり、そこにお皿と呼ばれる膝蓋骨があります。膝蓋骨(お皿)は、大腿四頭筋が腱になる中に埋め込まれていて、大腿骨と膝蓋骨(お皿)の間にも関節があります。膝蓋骨(お皿)の関節は、上と下にも関節があり、大腿骨の間にも関節があるので複雑な構造になっています。大腿四頭筋を動かすためには強い力が必要なために、膝蓋骨(お皿)は梃子の役割を果たしています。強い力で伸ばしたり、膝が違う方向に曲がらないようにするために重要組織です。そのため、怪我をしやすいです。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科クリニック
整形外科・スポーツ整形・リュウマチ科・リハビリテーション
http://www.kawakubo-clinic.jp/