河合貴子のレッズ魂ここにあり!「浦和を愛する覚悟(後編)」(12/19)
J開幕から浦和レッズを追いかけ、ケーブルテレビのパーソナティなどで活躍をしている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
寒空の中、埼玉スタジアムのアッパーから、何も発言すら出来ず、ゴール裏に居残った方々と橋本社長、運営スタッフを見守るだけの虚しい時間が過ぎて行った。この状況に終止符を打つための策はないのだろうか?この現状を橋本社長と運営スタッフだけに責任を任せていて良いのだろうか?浦和を愛する気持ちがあれば、違う担当部署でも、事の終息を図ろうとしても良い筈である。しかし業務が忙しい事もあり、橋本社長と運営スタッフだけが居残った方々と向き合っていた。その姿を見つめながら「浦和は責任の所在をクラブ内の誰かに押し付けて、何処か他人任せのクラブになってしまった。そこには、浦和愛と言うものは存在しない」と感じてしまう自分の心が凍てついた。以前の自分なら、警備員に止められても行っていたが、今は立場を考えて保守的になってしまった。警備員に止められても、行くべきだったのではと葛藤した。
そんな中、元運営部長の畑中さんが痺れを切らして、ゴール裏の前に姿を現し、みんなの説得にあたってくれたのだ。拡声器を持った畑中さんの声は、私が居たアッパーまで届かなかったが、畑中さんが男泣きしながら訴えている気持ちは、その姿を見守る私だけでなく、居残った方々の心にも届いた。そして事態は、4時間半もかかりやっと終息の時を迎えた。橋本社長は「外から見たらブレている所があった。夢があって、ビジョンがあって、チーム作りに対しても一緒、クラブの活動も一緒、しっかりまとめ上げて実行に移していかないと・・・」と神妙な面持ちで話した。
この一件でも感じるが、「浦和レッズ」と言うクラブは、事務的で他人任せで、責任転換をしてしまうクラブになってしまったのか・・・。クラブとしての一体感を感じる事が出来ない。さらに、「All come together」のチラシを見て、違和感を感じたのは、私だけだろうか?外国籍の選手だけ、自筆で無かった事が違和感の発端であった。細かい事かも知れないが、チラシにはみんなが一緒だと言う統一感が無かったのだ。
また、原口元気選手が譴責と1週間の謹慎処分になった一件も、やるせない。岡本拓也選手もちょっとした悪ふざけで、原口選手を傷つけるつもりも無かったと思うし、原口選手も岡本選手を怪我させるつもりも無かったと思う。二人とも精神的に傷つき、事の重大さに猛反省している。人を傷つける悲しさを知ったと思うし、これを人生の糧にして欲しい。「事が大きくなる前に、止めに入れば良かった」と青山隼選手は自責の念に駆られていた。この一件は当事者だけでなく、浦和を愛する人達も傷ついた。「喧嘩両成敗」と言うものの、どんなに頭に来ていても暴力に出る事は許されない。
そもそも、浦和レッズは活動理念の一番最初に「社会の一員として青少年の健全な発育に寄与します。」と掲げている。浦和レッズが出来た当時、この件に付いて森孝慈さんに尋ねた事がある。森さんは、その時「プロサッカー選手だって社会の一員として責任がある。サッカーが上手いからと言って、社会常識がなければ、人としてだめだ。それは、プレーにも出る。途中で諦めたり、審判に文句ばかり言ったり・・・。サッカー選手で有る前に、一社会人であれ!サッカーばかりやって来たから、一般常識が無いって言われるのは悲しいよ」と大切な事を教えてくれた。
今の浦和には、本当に大切な事を教えてくれる人達が居るのに、それを教える環境が無いのかも知れない。愛するクラブの愛する選手達が傷つくのは見たくない。地元メディアである私の仕事ではないが、誰かが傷つく前に、社会の一員として教えてあげるべきだったと後悔している。原口選手の謹慎処分だけで事を終わらせて欲しくない。何故、この様な事態が起きてしまったのか?根本を考えないといけない。責任の一環は私にもある。
ある意味、全てにおいて事なかれ主義で、事が起きてしまってから誰かに責任を押し付けて事を解決する。事なかれ主義であるが故に、少しでも意見を提示すると、それは批判として受け止められてしまい、排除されてしまう。何とも悲しい事態である。不甲斐ない成績だった責任も、観客動員数が減少した責任も、浦和を愛する人ならば感じていると思う。では、どうやって責任をとっていくのか・・・。浦和を愛する覚悟があるなら、見て見ないふりの事無かれ主義ではなく、信念を持って意見を言い、行動すべきである。そして、何事もしっかりとしたコミュニケーションをとることが必要である。私には浦和を愛する覚悟がある。だが1人では浦和を変える事は出来ない。誰かに責任を押し付けるのではなく、みんなで責任感を持って、自分が出来る事をする。みんなで力を合わせて行けば、浦和の赤いダイヤは、再び眩い輝きを放つだろう。