浦和フットボール通信

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URAWA TOWN MEETING 005「2012シーズンを振り返って」 レポート(3)

2012シーズンは、再生、再建の年と位置づけでスタートした浦和レッズは、新たにミハイロ・ペトロヴィッチ監督を招聘。トップチームは3位となり、ACL出場権を獲得した。「URAWA TOWN MEETING005」では、そのトップチームについてのビジョンなどを聞くと共に、未だ伸び悩む観客動員数などにまつわるクラブ運営面の話から地域、ファン・サポーターとの絆作りについて、橋本代表が考えるクラブとしての継続性についても訊いた。

■ゲスト:橋本光夫代表、畑中隆一(事業本部長)、松本浩明(広報部長)
■司会:椛沢佑一(浦和フットボール通信)、豊田充穂
■日時:12月19日(水)19時半~22時
■場所:酒蔵力 浦和本店

ホームタウンと共に継続性のあるクラブ運営を行うための組織変更。

豊田:前回ミーティングの折に、私も椛沢編集長も感じたところでありますし、サポーターからの意見にもあったのですが……何より橋本代表の第1回目のミーティングの発声の中で貴重であったのは、「いままでの浦和と三菱の相互の努力をふまえた上で、浦和と命運を共にすること」を約束いただいた点です。これは非常に大きな成果でありましたし、この件に対する本誌読者からの反応もいただきました。この前提をもとにした方針だったと思うのですが、代表は9ヶ月前、「レッズを立て直すためには、浦和とレッズの経緯をよく知った人間を要所に据えなくては再建ができない」とおっしゃいました。ハートフル、レッズランド、レディースというレッズの財産を拠点として、地域との繋がりのプロセスをよく知った人物を要所に置く、そういう組織作りをする、と明言していただいたわけです。改めてお聞きしたいのですが、この組織作りの方針に至ったプロセスをお話しいただけますか。

橋本:3月の時にも話をしたかと思いますが、私自身の個人的な意見からすると、私が理解している浦和レッズと三菱自動車の関係は、サポーターや地域の方々が懸念されている関係と若干違うと、当時も今も思っています。当然、50%以上の株式をもっている筆頭株主であることは変わりませんし、私自身も三菱自動車に元いた人間としてレッズに来ているのは事実です。しかしレッズにきた私に対して、三菱自動車からレッズの経営、運営について口をだされたことは一回もありません。ただ、コンプライアンスを守るとか、しっかりとした経営をしなければいけないよということは自動車の社長と話をすることはありますけども、それ以外のことはありません。とは言いながら、浦和レッズというクラブは、私も含めてクラブの社員は40名弱の極めて小さな所帯であることは事実です。ほかの企業と違って、本当に地域の皆さんが戦っているクラブであることも事実です。よってこの事実を認識していることは色々な業務を進めていく上で根幹となる重要なことであろうと、それを一番よく知っているのはレッズ設立当時からいるプロパーの人間であるはずだろうと……そういうメンバーをより活用していくことが、レッズ再生のための一番の近道であるし唯一それしかないのではないかと考え、3月はあのような発言をさせてもらいました。

豊田:本日ご来場の方たちにもおられますが、一定年齢まで達しているホームタウンのサポーターはこのクラブが体験してきた経緯をよく知っているのです。いまのお話で一番気になるのがその方針に至った橋本代表の考えを、次のトップに方にどうやって継承をしていくのかということ。実はこれは何回も問題となり、懸念をしている部分です。タウンミーティングにまで参加き、ホームタウンと膝をまじえて話をすることを重要視してくれている橋本代表をして、そこを理解いただけるまでに3シーズンを要している(苦笑)。その深さを知るのには時間がかかります。次のトップの方が来る、その次のトップの方が来るたびに後退と前進を繰り返すのはもう嫌、というのが率直な心情です。先ほど代表がおっしゃった各ポストにレッズと浦和のプロセスをよく知ったスタッフを置くということはマネジメントサイドの全人事権です。トップにいる人物、すなわち浦和レッズ代表にしかできない決定と思います。それを継承することは非常に困難な業務と思うのですが、その準備として行なわれている努力があればお伺いしたいです。

橋本:人事に関わる話などで難しいですが(苦笑)。私が来た時、その前も含めてずっと、何人か三菱自動車からレッズにきたメンバーがいました、そのメンバーの中には社長以外にも取締役としてきた人間もいました。そのメンバーの主たる業務は何年か営業サイドの業務についているケースが多かったのではないかと思います。営業サイドはレッズの経営を支える極めて重要な業務ですので、そこをやっていたと。当然、地域のパートナーの皆様、サポーターの皆様の入場料を関連する業務をやっている運営サイドの話も私は営業サイドといいますけども、そこに三菱自動車から来た日の浅いメンバーが担当したことは事実と思う。それをなぜかレッズサイドからも相応しくないという話は出なかったのだと思います。私は今季、ここにいる畑中に事業本部長という役を担ってもらうことを決めました。彼の下にはスタジアムの試合運営をする運営部門がありますし、パートナー営業というまさに広告宣伝費を稼ぐ部門がある。さらにはマーチャンダイジングというグッズの販売をやる、レッズが自分で稼ぐ収入の部分をすべてを彼の指揮下にいれました。(その決定への主体は)地域の皆さんからどれだけサポートしてもらえるかということが大切な業務かということを勘案してのことです。この背景がある限り、トップが変わってもこの流れは継続できると考えます。新しくトップが来るとしたら、私のこの思いはしっかりと引き継がないといけないと思います。

10年後、どんなレッズでありたいか。

豊田:浦和フットボール通信を中心としたこのタウンミーティングは、「10年後、どんなレッズでありたいか」という共有テーマのもとに継続して行く意向です。冒頭に橋本代表言われた通り一年ごとの成績に奢らず、二年後どうなっているか、三年後どうなっているか、10年後にホーム浦和とレッズの関係がどうなっているかという長期スパンを考えて行きたいからです。この視点のもとに、橋本代表が考える10年後のレッズの理想を伺いたいのですが。

橋本:今年レッズの設立20周年ということで、クラブの正式な法人名も5月に浦和レッドダイヤモンズ株式会社と変えました。20年にあたって、クラブとしては3年間の中期目標計画を立てようということで、クラブの中で議論をして、2012シーズンはその初年度と位置づけて活動をしてきました。3年度の目標を建てるときに3つの柱を設定しました。その3つの柱は、今質問をいただいた10年後にも変わらない柱だと思いますので、そのお話をしたいと思います。ひとつは魅力ある強いチームを作り続けるということ。ふたつめは、ファン・サポーター、地域の皆さんから誇りと思われるクラブを目指し続けるということ。3つめは、クラブとしてしっかりとした経営基盤を確立したクラブであり続けるという、この3つの柱に向かって3年間の中期計画で、このような活動をしていこうと決めました。この3つの柱は私は揺るぎないもので、クラブの基本理念に合致するものだと思っています。一言でいうとレッズワンダーランドをあらゆる場所で、ファン・サポーターの皆さんと共有したいということであります。

豊田:分かりました。ありがとうございます。

参加者からの質問タイム「レッズスタイルとはなにか?」

椛沢:ここからは参加者皆さんからの質問タイムを設けたいと思います。

質問者:橋本代表が考えるレッズスタイルはどういうものでしょうか。

橋本:レッズスタイルについては、クラブの中でもいろいろと考えが違っても私は良いと思っているのですが、私は全員が攻撃的なサッカーをして、結果を収めるということがスタイルでありたいなと思っています。

質問者:そのスタイルの理念をもって、今回はミシャ監督を招聘されたということですね。ミシャさんがやっているサッカーが、浦和レッズが目指しているサッカーだと捉えてよろしいでしょうか。

橋本:結果の部分ではずれはありますけど、方向性の部分では大きくずれていないだろうと思っています。

質問者:ミシャさんのサッカーを10年後も続けていくというイメージで、ミシャ監督を連れてこられたということでしょうか。

橋本:そのつもりです。

質問者2:補強の面で話がありましたが、放出の部分で田中達也、ポポ以外の部分で情報があれば、教えてください。

橋本:今年、シーズンの途中から若手の選手をレンタルに出しました。レンタルの選手に関してはまだ最終的にすべてアナウンスできているわけではありませんけど、継続する選手もおりますし、ここで契約が切れた段階でそのまま移籍をしてもらうということもあります。

質問者3:育成の話になりますが、ユースがプレミアから降格をしてしまいました。トップにいるユース出身の選手たちが活躍する時に、埼玉スタジアムが盛り上がると思いますので重要な部分だと思いますが、現状を見た時に、ユースチームの強化について展望がありましたら教えて頂けますでしょうか。

橋本:ユースについてクラブから正式にリリースはしておりませんけども、我々も一年間、今シーズンを振り返った時にどうであったかは強化本部長とは話をしております。ユースについては指導体制についても見直しを行って、新しい体制でユースの育成を図っていきたいと考えています。ジュニアユース、ユースと分かれている中で、浦和レッズは年代別で違うメンバーが指導をしてきましたが、その体制が本当に良いのかを議論した上で、中学校1年生の時点では、2年生、3年生と同じようにはできないかもしれないので判断がいるかもしれませんが、2年生、3年生を指導するコーチは一体となって連携をもってやるほうが良いだろうという思いもありますので、そこでのコーチ体制の見直しを考えて来年はやっていきたいと思っています。

質問者4:プロスポーツ選手が競技力向上に加えて、人間力などを教育する部分について橋本代表にお伺いをしたいのと、広報部長には来年にむけての目新しい広報戦略がありましたら、お教え頂けますでしょうか。

橋本:すべての人材に対して言えるのは、人格、人間性の育成を重視すべきということは一般社会でもプロスポーツクラブでも共通して言えることと思います。過去にも選手間の問題は起こりましたが、クラブとしてどう選手を指導すべきかは、今年一年間クラブが取り組んできたテーマでもあります。いろいろな部門からプロジェクトチームを作って、選手たちにレッズの何を伝えるべきかというポイントに取り組んでいます。それを受けて選手個々が自らの人格の形成に取り組んでもらうということは、チームに限らず全ての部署に共通することではないかなと思っています。

松本広報部長:近年、情報というものが個人で自由に発信できる世の中になってきていると思います。我々がいくら新しいと思って、こちらから一方的に情報を提供してもそれが果たして皆さんにとって良いものかは、そのように受け止められないで、いろいろなつぶやきがされたりという風になっていると思います。時代として本当に正しいことをしっかりとやっていくということがクラブが問われている時代だと思いますし、よりえりをただして、正いことを突き詰めていく。代表から経営基盤をしっかりとしていくということにつながっていくと思います。間違ってしまったら、とにかく早くつまびらかに間違えてしまいましたと謝ることが一番重要なのではないかと思っています。この2点をしっかりとやっていきたいと思います。抽象的な話になってしまいましたが、このように考えています。これが地域の皆さんから信頼されて、誇りに思われる条件ではないかと思います。

椛沢:それでは、第2部はこれにて終了とさせて頂きます。このあとは、皆様と直接、膝をつきあわせてお話をして頂く時間にしたいと思います。ありがとうございました。

橋本代表挨拶
「一緒に戦って頑張りましょう。ACLも一緒に行きましょう。クラブもいろいろなことを考え、模索をしていますので、その部分もアナウンスができればと思います。今晩は選手の話もあまり出来ず、申し訳ありません。たとえば6ヶ月後にはやってくれるかもしれない、という長いスパンで見守って頂ければと思います。本日はありがとうございました。」

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